YO茶の足跡残す日記

日々感謝の気持ちで、思う事をいろいろ書いていきます。

自民党が発表した日本国憲法改正案を考える(その5:最終回、その他編)

おはようございます、YO茶です。本日は5月3日、憲法記念日です。ゴールデンウィーク企画「自民党日本国憲法改正案を考える」も本日で最後になります。さて、ここまではここまでは、特に気になる章をひとつずつ見てきました。ここまでのブログは以下となります。


自民党が発表した日本国憲法改正案を考える(その1:前文編)
自民党が発表した日本国憲法改正案を考える(その2:前文編・続き)
自民党が発表した日本国憲法改正案を考える(その3:天皇編)
自民党が発表した日本国憲法改正案を考える(その4:安全保障編)




自民党憲法改正案は全十一章で構成されています。(括弧内は現行憲法での章タイトル)


前文
第一章 天皇
第二章 安全保障(戦争の放棄)
第三章 国民の権利及び義務
第四章 国会
第五章 内閣
第六章 司法
第七章 財政
第八章 地方自治
第九章 緊急事態(現行では無し)
第十章 改正
第十一章 最高法規



これまで前文、第一章、第二章についてはそれぞれ個別に見てきました。特に今回の改正案の中でポイントとなる重要な変更点が多かったからです。三章〜十一章についてもそれぞれ大切な変更点があるのですが、今日で締めたいこともあり(笑)残りはまとめて考えてみたいと思います。



【第三章 国民の権利及び義務】
第三章は、各章の中で一番条項の多い章です。その内容も多岐にわたります。その中でも私が気になった条項は次のようなものです。


・第十五条の3
「公務員の選挙により行う場合は、日本国籍を有する青年者による普通選挙の方法による。」


日本国籍を持たない外国人の国政への参加は、内政干渉となります。外国人地方参政権の問題なども含め、グレーな部分を排除し、明確にすることは非常に正しいと思います。



・第二十四条
「家族は、社会の自然かつ基本的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」


本来、この条項に書かれていることは社会通念としては「当たり前」のことです。しかし、これを憲法に規定しなければならないほど家族の信頼関係は希薄化してしまっているということなのでしょうか。。ただ、家族の形は多様化しています。家族の定義については関連法案で議論が必要となりそうです。


・第二十五条の三
「国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。」


この条項の追加には強く賛成します。最初に思い浮かべたのは、ペルーの日本大使公邸占拠事件です。この条項が追加されると、自衛隊による救出のための出動ができる根拠となり得ます。現在の自衛隊法では、「緊急事態などの時の在外邦人の輸送」(八十四条の三)しかできません。


この自衛隊法の改正も当然ながら行うことになると考えますが、これはかなりの議論となるでしょう。このケースでは、武装した自衛隊員が高い確率で武力行使することになると考えられるからです。当然憲法第九条の国防軍による救出になるわけですが、国外への威嚇とならないような行動にするためにはどこまでが許されるのかなど、慎重に、しかし時間をかけすぎずに結論を出す必要があると考えます。


・第二十六条の3
「国は、教育が国の未来を切り開く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。」


今回、自民党の改正案への条文には、特に不満を感じることはありませんでしたが、この条文だけ唯一残念だと思いました。私は、整備するべき教育環境の対象を「国民の」と明確にしてほしかったです。つまりこういうことです。


「国は、教育が国の未来を切り開く上で欠くことのできないものであることに鑑み、国民の教育環境の整備に努めなければならない。」


学校についても、朝鮮学校への高校無償化の適用であるなど様々なグレーな問題があります。そういった事で一線を引くためには、上記のように「国民のための教育環境の整備」と明示してほしかったなと感じました。



【第四章 国会】【第五章 内閣】
どちらで規定すべきかは難しいところですが、残念だったのは「内閣総理大臣の罷免」に関する条項が追加されなかったことです。現行憲法では、自らが辞めると言わない限り、総理大臣を他者が辞めさせる術がありません。その根底には、総理大臣の職務を遂行する能力がある人が就任するということが前提となっており、能力のない人が総理の座につくなどということは当初思いもしなかったのでしょう。


しかし、民主党政権になってからの鳩山氏、菅氏の国益を著しく低下させたあのひどさは、多くの国民、与野党の議員が「辞めさせないと」と危機感を持ったはずです。今回、何らかの方法で総理を罷免させられる条項を検討し、追記すべきではなかったかと思った次第です。


もちろん、安易に行政のトップが辞任させられてしまっては国政は安定しません。なので、それなりに高いハードルを設けるべきだと思います。例えば総理大臣選定時と同様の条件とするとか、場合によっては、それに加え国民投票過半数以上賛成とする、などでもよいではないですか。これから先、鳩山氏、菅氏のような総理を誕生させてはいけません。不幸にもそのような人物が就任してしまっても、辞任させるような仕組みを用意すべきです。



【第六章 司法】
司法の章での変更点で特に私のコメントはありません。



【第七章 財政】
おっ!と思った箇所が一つありました。

・第八十六条の4
「毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。」


単年度会計から複数年の会計を許容する条項を追加してきましたね。これによって、単年度で余った予算を使い切らなければならないといった無駄を多少は減らせる(のかな?)しかし、長期間にわたる大型プロジェクトなどの予算編成のためには有効な条項であり、この条項を支持します。



【第八章 地方自治
地方自治の章については、かなり条項が追加されています。現在の地方自治の重要性を踏まえ、より細かく規定されたのだと推測します。中でも私が注目したのは以下の条項です。

・第九十四条の2
地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する。」


これは明らかに外国人地方参政権を意識したものです。まさにこの通りです。何の異論もありません。解釈が曖昧にならないよう、このように明確に記載すべきです。


【第九章 緊急事態】
昨年の東日本大震災の影響を受けてか、それとも草案として元々盛り込まれていたのかはわかりませんが、緊急事態が発生した際の措置に関する条項が追加されました。この章は、現行憲法にはなかった章となります。


現在、緊急事態を宣言できる根拠となる法令として、災害対策基本法に基づく「災害緊急事態の布告」と、警察法に基づく「緊急事態の布告」があります。しかし外部からの武力攻撃などに関して緊急事態を宣言する根拠となる法令はないように思います。警察法での緊急事態とは、「大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態」とあり、これが適用できそうですがあくまで警察のための法律です。自衛隊を動かすためには自衛隊法が適用されます。自衛隊法七十八条には以下のようにあります。


内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。 」


おそらくこの条項によって出動は可能なのですが、警察の手に負えない場合には自衛隊となり、緊急事態宣言時、いきなり直接自衛隊への要請が出来るような条文とははっていません。(解釈によっては可能かもしれませんが。)災害時、自衛隊への出動要請は各自治体からなされることになります。



つまり、いろんな組織への要請、指揮系統がそれぞれバラバラに規定されていて、無理やり法解釈しないと連携が厳しいように思います。そう考えると、各法律の上位に位置する憲法で規定されることで、現在の各法律での規定を束ねることができ、法律上各組織を連携させやすくなるように思います。


いずれにしても、各法律の改正、新しい法律の策定も必要となると考えます。



【第十章 改正】
この章では、今回の改正の中でも目玉の一つとなる改正がなされています。憲法改正のために必要な議員の賛成数を三分の二から過半数に変更したのです。世界の憲法の改正に必要な議員の賛成数というものをサラッと調べてみると、以外と三分の二という数字がでてきます。


憲法が、コロコロ安易に変更されてしまえるようなものであってはいけないという事は言うまでもありませんが、ただ現行憲法が67年も変更できなかったことを考えると、これは確かに過半数で良いように思います。他の法案とは異なり、憲法国民投票という審判を経るわけでというハードルが設けられていますからね。


ただ、この改正案を通すためには現行憲法の衆参両議院で三分の二を獲得する大与党にならなければ達成できません。なので、憲法改正のために期限付きで大連立を組むということを実現させるべく自民党は活動すべきです。


また、国民投票法に基づく作業部会も再開し、準備を進めなければなりません。



【第十一章 最高法規】
この章では、憲法が国の最高法規であり、憲法に反する法律、命令などは無効だという事が規定されています。その中で、以下の条項の記載を見てみます。



・第百二条
「すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない。」

「2 国会議員国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。」


これが現行憲法ではどう記載されているか。

・第九十九条
天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」


現行憲法では、一般国民の事が抜けていたんですね。なので、国民は憲法を尊重しましょうという事を改めて書いたというのは当たり前と言えば当たり前ですが、重要なことだと思います。




さて、5回に分けて書いてきました「自民党憲法改正案を考える」シリーズ。私が思うところを好き勝手に書いてきましたが、改めて憲法を読み直し、様々なことを考え直すよいきっかけとなりました。今回書いたことは、あくまでYO茶の私見です。ですから当然私と違う意見や考えを持つ方がいらっしゃるでしょう。



普段生活していると日本国憲法の事など考える時間はありません。日々の生活は忙しいですからね。しかし、「日本国憲法」はすべての法律の上位に位置し、日本の法体系根幹となっていて、私たちの生活のあらゆるところにつながっているのです。特に第九条など、私たちは金科玉条として大切にしてきました。しかし、実はその内容が逆に悲劇をひきおこしてしまった原因になってしまったことを私達は知らなければならないのです。


今日はあいにく雨です。自宅でのんびりされる方も多いでしょう。最初にも書いたように今日は憲法記念日。すこーし時間をとって、憲法のこと、日本の事を考えるきっかけになれば幸いです。


最後に、私のブログにやってきて下さり、このシリーズを読んでくださった皆様、心より感謝します。ありがとうございました。


#日々感謝 m(_ _)m